Contents
建築に会いに、日帰り旅を。
こんにちは、coto*です。
何度も足を運んだ大阪だけど、今回は少しだけ違う角度から。
建築が好きなわたしが、大阪駅を出発点に、小さな旅に出てきました。
目的はただひとつ——建築に会うこと。
行き先は、フランク・ロイド・ライトの面影を残す「ヨドコウ迎賓館」。
そして、道中にちりばめられた静かな場所たち。
わたしにとって建築巡りは、「建物を見ること」以上に、「空気を感じること」。
五感をほどいて、時間を丁寧に味わう、そんな旅になりました。
地図にない感動は、建築の「余白」に宿っている気がする。
今日はそんな余白を探す旅に出ました。
9:00 大阪駅|この旅のはじまり
大阪駅(御堂筋線梅田駅)から電車に乗ってなんばにある、タイムズカー 御堂筋カーピットまで20分。
(夕食をこのあたりで食べる予定のため、なんばへ移動しました。)
それから車で出発。難波の喧騒を抜けて、車で兵庫県芦屋市へ。
現地までは35分。
高速道路にのって、ゆるやかな山の稜線が見えてくると、少しずつ気持ちが静まってきます。
10:00 時間の彫刻に触れる
滞在目安 〜11:15 (75分)
ヨドコウ迎賓館
高台にひっそりと佇む、ヨドコウ迎賓館。
フランク・ロイド・ライトの設計による、日本に唯一残る住宅建築です。
石と木。光と影。
そのコントラストがとても印象的でした。
建物内では、是非1人でゆっくりと建築に浸ってください。



幾何学模様の木と石に、水平ラインの美しさ、そして自然との融合。建物の中に入ると、空間の流れがまるで音楽のように緩やかなスキップフロア*1で繋がっていました。窓から見える芦屋の街並みと六甲の山々が、建築と風景をつなぎ、静かな感動を呼び起こします。100年を超える、時間を宿す建築でした。
*1 スキップフロア:床の高さに段差を設け、空間に変化をつけた構成のこと。ひとつながりの空間の中で、床の高さをずらして異なる用途や雰囲気をつくり出す手法。
窓からのぞく芦屋の街と、海のきらめき。
建築が、風景を切り取る額縁のように思えて——
その美しさに、ただ、立ち尽くしました。
この場所の記憶は、別の記事でゆっくり綴りますね。
→ただいま、記事準備中です…
ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)
📍所在地:兵庫県芦屋市山手町3−10
開館時間:10:00〜16:00(最終入館 15:30)
入館料:一般 500円(学生料金あり)
*団体の場合は事前予約必須。
*建物内は撮影許可が必要な場合があります。詳しくは下のURLから公式サイトでご確認を
11: 15 ランチタイム
滞在目安 〜12:45 (90分)
ちょっぴり芦屋散策
芦屋市は日本屈指の高級住宅地であり、日本で初めて市内全域を景観地区として指定された街でもあります。
そんな美しい街並みには、ミシュランで1つ星を獲得しているお店が、なんと9軒もあるのだそう。
その歴史は古く、『万葉集』などの古典にもその名が記されており、
ずっと昔から、人々の暮らしが静かに息づいてきた場所なのだと感じます。
芦屋のエリア概要
ヨドコウ迎賓館は芦屋市山手町の高台にあります。そこからー
①西側〜山手町住宅街(昭和モダンと洋館)
②東・南側〜芦屋川沿い(自然と建築の調和)
どちらに歩いても「歩いて心地よい風景」に出会えます。
ヨドコウ迎賓館での滞在時間が想定より短ければ、周辺に駐車場も多くあるので、車を移動させて散策するのもおすすめです。

①西側〜山手町住宅街
芦屋の中でも、ことさら静かな空気が流れる山手町。坂道をのぼると、瀟洒な住宅が点在し、街路樹がやわらかく道を縁取ります。
ただ歩くだけでも、建築好きにはたまらない時間ですが、「芦屋神社」や「滴翠美術館」もおすすめ。
喧騒から離れた場所で、時間がすこしだけゆるむのを感じられるエリアです。
②東・南側〜芦屋川沿い(自然と建築の調和)
芦屋川に沿って流れる風が心地よく、
川辺の遊歩道には親子や犬と歩く人の姿も。
自然に溶け込むように佇む邸宅やカフェ、モダンな建築がほどよい距離感で並んでいて、
この街が人の暮らしと自然、建築の調和を大切にしていることが伝わってきます。
季節ごとに移ろう景色のなかを、ゆっくりと歩きたくなる、「日常を美しく暮らすこと」へのヒントが見つかるような気がしてきます。

📷写真スポット例
・山手町のカーブ道 ー 石垣・塀越しの洋館の屋根や煙突
・高台の坂道 ー 空に向かって続く坂道+低層の家並み
・芦屋川+橋 ー 川と橋と並木が水平に重なる構図
・石階段と木漏れ日 ー 植栽・レンガ・石などマテリアルの組み合わせ
芦屋川fumotoキッチン
📍ヨドコウ迎賓館から車で2分
OPEN:9:00 – 21:00(月:定休日)
テイクアウト可能!

芦屋 天がゆ 本店
📍ヨドコウ迎賓館から車で3分
LUNCH:11:30 – 14:00 (定休日なし)
オープン時間は混みますので早めに!

13:00 瓦と庭園が描く、日本的な対称美。
滞在目安 〜14:10 (70分)
白鶴美術館
四季を豊かに感じられる六甲山の麓、白壁と瓦屋根が静かに佇む白鶴美術館。
ここには、時の流れからそっと取り出されたような静寂がありました。
昭和14年に開館したこの美術館は、白鶴酒造七代目の嘉納治兵衛が東洋の古美術を後世に残すために建てたもの。
建物のスケールは大きいのに、どこか人の気配を感じるやさしさがあり、「建築が美術品を包み込むショーケース」の様に感じられました。


阪神間モダニズム*2の香り漂う美術館。建物の細部に宿る職人技と、庭園の緑が心を落ち着かせてくれます。30分の滞在でも、建築と美術の余韻がじんわり残る場所でした。
*2 阪神間モダニズム:阪神間モダニズムは、明治の終わりから昭和初期にかけて、神戸と大阪のあいだで育まれた、西洋の建築や文化を取り入れた、豊かで洗練された暮らしのかたち。
白鶴美術館
📍所在地:神戸市東灘区住吉山手6-1-1
🕒開館時間:10:00〜16:30(入館は16:00まで)
🗓※春・秋の展覧会期間のみ開館(要確認)
💰入館料:一般 800円、学生 500円
15:00 チッパーフィールドが設計した、記憶と祈りの場所。
滞在目安 〜15:30 (30分)
猪名川霊園

北摂の山なみに、ひっそりと、けれど確かに佇む猪名川霊園。
礼拝堂と休憩棟は、この地の風景と呼吸を合わせるように、静かに配置されています。
設計はデイヴィッド・チッパーフィールド。日本で唯一の彼の建築です。段々畑のような敷地を貫く中央階段が軸となり、建物は山の稜線と対話するように並びます。
礼拝堂は中庭から少し離れた、静寂に包まれた場所に置かれ、ヴィジターセンターや休憩棟とは、ひらかれたプラットフォームでつながっています。
歩くほどに境界がほどけていき、風や光、草木の揺らぎが建築とまじわる。
大地がそのまま立ち上がったような、あるいは、自然に還っていく途中のような——そんな感覚を覚える霊園でした。

この場所の記憶は、別の記事でゆっくり綴りますね。
→ただいま、記事準備中です…
猪名川霊園
📍所在地:兵庫県川辺郡猪名川町清水北谷27番地
⛅霊園のため観覧はマナーを守って静かに。建築的視点での見学は、事前連絡を。
16:40 読むことと、風景のなかで、ただ在ること。
滞在目安 〜18:10 (90分)
松原市民図書館
旅の終わりに立ち寄ったのは、松原市民図書館。
溜め池に、鎮座するように立つ松原市民図書館(通称「読書の森」)。設計は高野洋平+森田祥子/MARU。architectureと鴻池組によるもの。その姿は、まるで古墳のように、年月を宿す自然物と一体になっている様に感じました。


松原市には古墳やため池が点在しており、地域の風景に馴染む建築が求められた。
3層のスキップフロアで、吹き抜けを介して空気や人の動線が立体的に巡る設計。風や光が建築を通して循環しています。
子どもから大人までがちょうどいい場所を探し、過ごしていました。建築が「もう一つの居場所」をつくる力を感じました。
この場所の記憶は、別の記事でゆっくり綴りますね。
→ただいま、記事準備中です…
読書の森(松原市民松原図書館)
📍所在地:大阪府松原市田井城3丁目1−46
開館時間:10:00〜19:00(木曜休館)
18:25 大阪駅|出発点に帰って、
余韻を味わいながら、おいしいものと静かな会話を楽しみたくて。
旅の締めくくりに、ふぐと季節の品が美味しい「与太呂」を訪れました。
千日前線・なんば駅25番出口から徒歩3分、道頓堀の喧騒を少し抜けると、レトロで落ち着いた佇まいが迎えてくれる「ふぐ料理 与太呂」。テーブル席とカウンター席があり、一人でもグループでも訪れやすいのが魅力です。地元リピーターにも人気の店で、口コミには”てっちり”が評判。ヒレ酒と、ふぐの白身の繊細な甘みと、静かに揚がった天ぷらの軽やかさ、是非お試しください。

ふぐ料理 与太呂 (ヨタロ)
📍所在地:大阪府大阪市中央区道頓堀2-4-9
さいごに
建築旅って、心に小さな余白をくれる。
説明できない感情をすくい上げてくれるときがある。
旅の途中で見た光や影が、ずっと心に残って、
気づいたら、心の奥にそよ風のようなものが吹いている。
今回の旅は、派手な観光地はなかったけれど、
地域の人々の生活に確かに存在し、どこも静かに、じんわりと記憶に残る場所ばかりでした。
「何度も行った大阪だからこそ、別の角度で味わいたい」
そんな人におすすめしたい、大阪発の1日建築小旅行。
よかったら、写真と一緒にこの旅の空気、感じてください。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
またどこかで、旅のかけらを分かち合えたらうれしいです。
今回の工程
