ふんわりと流れる音と時の軌跡

こんにちは、coto*です。
先日、ふと訪れた東京都現代美術館で開催中の「坂本龍一|音を視る 時を聴く」展。そのタイトルに惹かれ、足を運びました。

館内に一歩踏み入れると、そこには音と時間が空間に息づくような、柔らかくもどこか荘厳な世界が広がっていました。坂本龍一が生涯を通じて探求してきた「音」と「時」の物語が、インスタレーション作品として空間に溶け込み、私たちに新たな感性の体験をもたらしてくれます。

空間に溶け込む音の彫刻


館内に入ると、まず目に飛び込んできたのは、静謐な光と影のコントラスト。展示室の中は、壁や天井、床にまで細部にわたり設計された照明が、まるで生き物のようにリズムを刻み、音の断片が形を変えて漂っているかのようです。坂本が生前遺した展覧会構想に基づき、未発表の新作とこれまでの代表作が、館内外の空間にダイナミックに配置され、来場者はただ鑑賞するだけではなく、その空間そのものと対話するような体験をすることができます。

静かな朝のひととき、ゆっくりと展示室を歩みながら、ふと耳に届く微かなサウンド。その音は、ただ単に「聞こえる」ものではなく、壁面や空気そのものに染み込むような、時の重みと柔らかさを感じさせる。私が感じたのは、まるで建築が生み出す空間の中で、音が自らの存在意義を問いかけるような、不思議な対話の瞬間でした。

時の断片を紡ぐインスタレーション


展覧会のテーマ「音を視る 時を聴く」は、坂本龍一が長年にわたって追求してきた問いそのもの。展示された作品の中でも、特に印象的だったのは、新作《TIME TIME》です。高谷史郎とのコラボレーションによって生み出されたこの作品は、3面の映像ディスプレイが重なり合い、音楽と映像がひとつの詩のように流れ出します。作品が放つ音の断片は、時計の針のように一定のリズムを刻むと同時に、決してリニアには進まない、まるで多重の時間が同時進行するかのような錯覚を覚えさせます。

また、坂本が追求してきた「非同期性」の概念は、展示空間全体に広がる様々な作品群の中に散りばめられ、来場者自身が自分だけの時間の流れを感じ取るきっかけとなります。まるで、一つ一つの作品が、過ぎ去った時間の断片をそっと手渡してくれるかのように。館内のあらゆる角度から感じる光と音の演出は、私たちの日常の中に潜む「儚さ」と「永遠」を同時に映し出す鏡のようでした。

音と空間が紡ぐ、ふんわりとした記憶


坂本龍一という存在は、単に音楽家としての顔だけでなく、建築や映像、さらには空間全体に対する深い洞察をも持っていました。彼が遺した作品は、時に鋭く、時に柔らかな風合いを持ちながら、私たちに多様な感性の刺激を与えてくれます。東京都現代美術館の広々とした展示室では、坂本のサウンド・インスタレーションが、まるで一つの生きた彫刻のように空間に浮かび上がり、その存在感を際立たせています。

私がふと立ち止まり、じっくりと耳を澄ませると、遠くから聞こえる微かな波の音や、風の通り抜けるような音色が、まるで時間の流れそのものを感じさせるかのようでした。これは、ただの展示ではなく、坂本龍一が生涯を通じて問い続けた「時間とは何か」というテーマに対する、ひとつの答えのように感じられます。

建築と芸術が交差する場所


ふんわりとした建築の表現を愛する私にとって、この展覧会はまた、建築そのものが芸術となる瞬間を体験する機会でもありました。東京都現代美術館という空間は、その広さと柔軟性によって、坂本龍一の作品が持つ多層的な表情を余すところなく引き出してくれます。壁、床、照明、さらには外部の景色までもが、作品と一体となって、来場者にとっての「体感型の芸術体験」を創り出しているのです。

展示室を歩くたびに、ふと感じる建築の持つ温かさや、時の流れを感じさせる柔らかな空気。これらは、坂本龍一の音楽や映像と相まって、まるで一編の詩を読むかのような、心にしみる体験をもたらしてくれます。訪れる者は、それぞれが自分自身の記憶や感情と対話しながら、この場所で過ごすひとときを、ふんわりと味わうことができるのです。

まとめ ― 音と時が紡ぐ、新たな詩情


「坂本龍一|音を視る 時を聴く」展は、私たちにとって、ただの芸術展ではありません。
それは、坂本龍一が追い求めた「音」と「時」が、現代の空間に新たな詩情をもたらす、ひとつの物語です。
都会の喧騒の中にあっても、ふと立ち止まり、耳を澄ませると、そこには時の流れや建築の温もりが感じられ、私たちはほんの少しだけでも、日常の忙しさを忘れ、心に余裕を取り戻すことができるのです。

この展覧会は、音楽家として、そして芸術家としての坂本龍一の多面的な表現が、建築的な空間と融合し、私たちに新しい感覚の体験を提供してくれます。もし皆さんが、ふんわりとした時間の流れに身を委ね、音と光が織りなす美しい物語に出会いたいと思うなら、ぜひ東京都現代美術館へ足を運んでみてください。そこでは、坂本龍一の「音を視る、時を聴く」挑戦が、あなたの心に柔らかな灯りをともすことでしょう。

最後まで読んでくださりありがとうございます🌱


今回はcoto*がお届けする坂本龍一展のレポートでした。
静かに流れる時間と、ふんわりと包み込む音の世界に、皆さんもぜひ身を委ねてみてください。

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