こんにちは、coto*です。
今回は「建築事務所で働き始めたばかりの人が、はじめにぶつかるリアルな壁」についてお話します。
なんとなく設計の世界って、大変そうだけどなんだかキラキラして見えるますよね。
現実はけっこうハードです。
「建築事務所って実際どんな働き方?」「新人って何が大変なの?」
そんな疑問に、ちょっとリアルに、ちょっとやさしく答えていきますね。
1.【時間の壁】定時なんて都市伝説?
建築事務所に入ってまず驚くのが、「終わらない…帰れない…」という日々。
私自身、1年目のときはまだそこまでの経験はなくて、どちらかというと、上司の姿を見て「もしや…」と感じていたくらいでした。
でも、2年目に入ったあたりから、帰れない日が少しずつ増えてきました。
設計の仕事では、ひとつひとつに丁寧さと精度が求められます。
納期前には、図面の修正やプレゼン資料の準備、施主とのやりとり…。
気づけば終電、なんて日も珍しくありません。
違う設計事務所に勤めている人たちと話していても、この「残業問題」はよく出てきます。
若手の建築事務所交流会を開いたときも、この話題ですごく盛り上がりました。
私はまだ比較的“ホワイト”な方と思っているのですが、
中には「うん、これは建築業界の闇かも…」と思うような働き方をしている事務所も、ちらほら(苦笑)。
でも、みんながみんな、その状況を「苦しい」と感じているかというと、実はそうでもないんです。
私たち設計者って、「もっと良いものをつくりたい」という気持ちで、
自ら進んで深夜作業に向かってしまっていることもあります。
仕事のどこにやりがいを感じるかは人それぞれ。
何を「楽しい」と感じるかによって、その状況を“受け入れられるかどうか”が変わるのだと思っています。
2.【スキルの壁】即戦力を求められる現実
新卒だし、まだまだ学びながらで…なんて甘くないのが現実。
小規模な建築設計事務所では、いきなり実務に入ることも珍しくありません。
CAD操作やCG制作、法規の理解、プレゼン資料の構成力…。
全部ひとりでやるの?ってくらい、覚えることだらけです。
他の業務でも、まだまだ手探りではありますが、実務を通して少しずつ成長していると感じています。
ただ、仕事のスピード感に押されながらも、「できること」をひとつずつ増やしていくしかないのだと思います。
焦らなくてもいい。けれど、立ち止まってもいられない。
この“スキルの壁”を越えるには、やっぱり地道な積み重ねしかないんですよね。
3.【コミュニケーションの壁】相手は施主だけじゃない
建築って、やっぱり「人と人」の仕事なんだと日々感じています。
設計というと、一人で黙々と図面を描いているイメージを持たれがちですが、実際はその逆。日々たくさんの人とやりとりしながら、ひとつの建築を形にしていきます。
施主さんはもちろん、施工会社さん、行政や確認機関、構造・設備などの協力事務所、時には職人さんまで。
さらに社内でも、先輩や上司、後輩やアルバイト…まわりは人だらけです(笑)
だからこそ、技術だけでなく、「伝える力・聞く力・察する力」がすごく大事。
専門用語を使いすぎずにわかりやすく伝えること。相手の意図をくみ取ること。温度感の違う人と、うまく“温度調整”をしていくこと。
最初のうちは、誰にどこまで話せばいいのか、そもそも敬語が合ってるのか…と戸惑うことばかりでした。
それでも、何度も打ち合わせややりとりを重ねる中で、少しずつ「こう話せば伝わる」「この人はこの順番が安心する」といった“気づき”が増えていきます。
また、BtoBの設計ではデベロッパーごとに受け入れられる雰囲気が異なります。言葉や資料を工夫し、会社ごとに合った雰囲気を探りながら打ち合わせを重ねていきます。
建築の仕事って、結局のところ、人と人の“関係性”の積み重ねで成り立っているんだなと、つくづく感じます。
「いい建築をつくる」って、図面の正確さや意匠性だけじゃなくて、
“信頼される人”であることがすごく大きいのだと思います。
4.【創造と現実の壁】理想だけでは設計できない
「こんな空間をつくりたい!」
設計を始めたころって、そんな“理想”に胸がふくらんで、スケッチや模型づくりがすごく楽しくて。
でも、実際に進めていく中で最初にぶつかるのが、現実の制約たち。
予算、法規、敷地条件、施工の難易度、納まり、工程…。
「えっ、あのプランNGなの?」
「ここに窓を開けると法規に引っかかる…?」
「構造が組めない? じゃあどこから考え直す…?」
思い描いていた“理想の空間”が、次々と削られていくような感覚。
はじめはショックで、正直落ち込むこともあります。
でも、そこで終わらないのが設計の仕事。
ある日、ボスに言われたのが、制約をかいくぐってより良いものを作っていくのが楽しい
そう聞いて、どうすれば成立するのか。どう置き換えれば、本質は守れるのか。
「ただつくる」のではなく、「限られた条件の中で、いかに良い形に着地させるか」を考える。
そこに、設計者としての“腕の見せどころ”があるように思えました。
そして不思議なことに、制約があるからこそ生まれる創造性ってあるんだと、気づくことができました。
「これ、予算の都合で素材を変えたけど、結果的にすごく良くなったよね」
そんなふうに、“理想のかたち”は変わっても、“想い”はちゃんと残ることもあります。
理想を持つことは大切。
でも、現実と向き合いながら工夫していく中で、
「本当に大切なことは何か」に気づけるのかもしれません。
5.【心の壁】自分に自信が持てない
最後に来るのが「自信喪失」という名の壁。
同期と比べて落ち込んだり、先輩の図面を見てヘコんだり。
でもね、これって誰もが通る道なんだと、今ではそう思うことができます。
3年後の自分に「よくやってるよ」って言ってもらえるように、
いまは目の前のことを、ひとつずつやるしかないと思っています。
さいごに:壁があるから、建築はおもしろい
建築の世界って、しんどい。正直に言えばそう思います。
でも、そのぶん、乗り越えたときの達成感も、大きいんです!
もしあなたが今、「もうムリかも…」って感じてるなら、
ちょっと立ち止まって深呼吸して。
そして、「なぜこの世界を目指したか」を思い出してみてください。
私はそうして頑張っています。
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