OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町-店内写真1

住宅街に佇むコーヒーラボー

住宅街に溶け込むようにデザインされた、シンプルで洗練されたカフェ。京都発の珈琲ブランドが手がける「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」は、まるで珈琲の研究所のようなこだわりが詰まった空間です。

はじめに—珈琲と建築

こんにちは、coto*です。
住宅街に佇む少し特別なカフェをご紹介します。
私は、日常的にコーヒーは飲みません。
しかし、コーヒーと建築、この一見関係のないように思える組み合わせは好きで、時々こうして楽しんでいます。
私にとって、珈琲と建築は深く結びついていて、コーヒーを味わう空間デザインが、その体験の質を大きく左右すると思っています。今回訪れたOGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町は、そんな「空間が生み出す体験」を強く意識した店舗でした。

開店時間より少し早く着きそうだったので、Googleマップを頼りに歩きながらも、せっかくなので朝の散策を楽しむことに。スマホから目を離し、静かな住宅街を歩いていました。すると、交差点の角でふと視界が開け、そこに一面ガラス張りのスタイリッシュなカフェ「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」を発見しました。
朝日が建物の後方からゆっくりと昇り、ガラスのファサードに街の風景が映り込む様子は、逆光のため店内の様子をかすかにしか映し出しませんでしたが、その奥に広がる空間がどのような表情を持つのか、ますます興味をそそられました。

こちらは、2月の開店時間(朝7時)にお店を撮影した写真です。

このお店のことは以前、Casa BRUTUSで目にした時から気になっていました。
建築事務所で働く新人として、空間のデザインやお店のコンセプトに惹かれ、実際に訪れてみることにしました。店内には、厳選された珈琲と細部にわたってこだわりが感じられる空間が広がっており、撮影した写真とともにその魅力を詳しくお伝えします。
(※写真は店内スタッフの許可を得て、撮影しています。)

お店のコンセプトとデザイン

実験的な珈琲体験を生み出すデザイン

「OGAWA COFFEE LABORATORY」のコンセプトは「実験的な珈琲体験」。
単なる気軽に珈琲を楽しむカフェではなく、コーヒーの味わいを深く探求できるラボのような空間です。たとえば、豆の焙煎度合いや抽出方法の違いを比較できるメニューが用意されており、一杯の珈琲を通して実験のような体験ができます。

お店の設計やデザインもこのコンセプトを体現するよう丁寧に計算されています。たとえば、どこからでもバリスタの動きが見やすいように、店舗の真ん中に配置されたカウンターは、訪れる人々がコーヒーの抽出過程を研究者のように観察できる工夫が施されています。また、一面ガラス張りのファサードは、外からも店内の雰囲気が伝わり、まるでオープンな実験室のような印象を与えます。

設計を手がけたデザイナーについて

この空間のデザインを手がけたのは、関 祐介氏です。クリエイティブディレクター・南貴之氏のアイディアを設計に落とし込みました。
Yusuke Seki studioを主宰する関祐介さんは、これまでにTHE SHARE HOTELS『KUMU 金沢』や『TSUGU 京都三条』などを手がけ、海外からも高い評価を受けるデザイナーさんです。
素材の特性を活かし、シンプルでありながら独特の存在感を放つ空間を創造することに評価されています。個人的に特に印象に残っているのは、彼が手がけた「sacai Aoyama」。初めて訪れたときの衝撃は今でも忘れられません。
素材の質感や光の入り方、店内で変化する空間のバランスが、単なる店舗を超えてまるで美術館のような「場」として成立していると感じました。もちろん今回のカフェも素敵ですが、「sacai Aoyama」の空間はやはり特別でした。

店内のデザインの特徴

住宅街に溶け込む、開放感あるデザイン

このカフェは、住宅街の静けさと調和するデザインが特徴的です。
交差点の角に位置し、緩やかに交差点へ傾いた一面ガラス張りのファサードが開放感を演出しています。店内からはゆったりとした住宅街の風景が広がり、都会の喧騒とはかけ離れた、落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。
また、日中は自然光が差し込み、店内に柔らかな光が広がります。夕方以降は温かみのある間接照明が空間を包み、その灯りが街にこぼれる。そうして、時間帯によって異なる表情を見せてくれます。

内装は、木材やコンクリートなどの自然素材を活かしたシンプルなデザインで、職人が手がけたアートや椅子、カップが並ぶことで、無機質な印象に温もりが加わっています。

このカフェの魅力は、単に珈琲を楽しむだけでなく、その「場の空気感」そのものを味わえる点にあります。住宅街にありながら、開放感と落ち着きが共存する特別な空間となっています。

桜新町という閑静な住宅街の中で、インテリアや照明の配置に至るまで全てが計算された心地よいバランスで構成されています。

空間設計と素材の調和

店内の空間設計は、日常の何気ない「珈琲を飲む」という行為を、特別なひとときとして感じられるように工夫されており、私たちに新たな気づきをもたらしてくれます。お店に入りまず初めに目に入ってくるのが、バリスタが珈琲を淹れる大きなカウンターです。そしてこのカウンターは店舗の中有心に位置し、カウンター内の床レベルを低く設計され、店内のどこにいても、店外の通りの反対側からもよく見えるようになっています。
他の珈琲店とは違い、珈琲の提供には時間がかかります。
しかし、その一杯を丁寧に用意しているバリスタの姿をお気に入りの席から眺め、待つ時間も特別な一杯をさらに特別にしてくれる気がしまいした。丁寧に淹れられる珈琲の香りを楽しみながら、運ばれてくる珈琲を楽しみに待つことが私にとって、朝のかけがえのない時間に思えました。
シンプルながら、長時間滞在したくなる居心地の良さが漂っています。

次の写真は関 祐介氏が設計したオリジナル家具。使われている石は京都の廃線市電の敷石です。
この敷石は入り口の床にも使われていました。
木材や石のディテールが手仕事の温もりを感じさせました。

そしてこちらの椅子は、Atelier2 +の椅子です。Atelier2 +は2人組のデザインユニットで、家具デザインだけでなく、建築やインテリアデザイン、さらにアートと幅広く活動をしています。

細部へのこだわり

カウンターのデザインには、独自の美学が表れています。
特に、珈琲を淹れるバーカウンターは、無駄を排したシンプルな構成ながら、木材と金属のコンビネーションが質感に深みを与え、まるで一つのアート作品のように空間の中心を飾っています。
さらに、店内の小物やディスプレイは、店主のこだわりが随所に感じられるセレクトアイテムとなっており、ここで過ごす時間が大切にしたい時に感じられます。
写真からも伝わるように、シンプルながら温かみのある空間は、窓越しに見える桜新町の風景と相まって、まるで街の一部となったかのような親しみやすさを醸し出しています。

提供されている珈琲とパン

こだわりの珈琲豆と多彩な味わい

OGAWA COFFEE LABORATORYでは、コーヒーそのものを探求する「実験的な珈琲体験」がテーマになっており、提供される豆の種類や抽出方法にも強いこだわりがあります。

常時19種以上のコーヒーを揃え、主に取り扱われている珈琲豆の種類には、以下のような特徴があります。(※現在のラインナップは公式サイトや現地で確認して見てください)

🫘取り扱い珈琲豆の一例

• エチオピア:フルーティーで華やかな香り、軽やかな酸味
• コロンビア:バランスの取れたコクと甘み
• ケニア:しっかりとしたボディとベリーのような酸味
• ゲイシャ種:希少でフローラルな風味(限定販売の場合あり)

このカフェでは、豆の種類だけでなく、焙煎度合いや抽出方法の違いを楽しめるメニューが特徴的です。例えば、同じ豆をハンドドリップとエスプレッソで飲み比べたり、浅煎りと深煎りの違いを体験できるメニューがあり、珈琲の多様な表情を体験できます。

焼きたてパンとこだわりのフードメニュー

珈琲に合うパンやその他のフードメニューにも注目です。

「TOLO PAN TOKYO」のパンを使用したモーニングメニュー

🍞パンのこだわりポイント

  • 池尻大橋の人気ベーカリー「TOLO PAN TOKYO」のパンを使用したモーニングメニュー
  • 炭焼きバタートースト
  • コーヒーの風味を引き立てるシンプルな味わい
  • バターや小麦の香りを感じるクロワッサン、カンパーニュ、甘さ控えめのブリオッシュなど

珈琲の焙煎による香ばしさと、パンの焼きたての香りが店内に広がり、朝のひとときを特別なものにしてくれます。

🍽 その他のフードメニュー

サンドイッチやパニーニなど、焼き菓子、エスプレッソを使ったスイーツ、さらにはトーストや季節の野菜グリルなど、訪れるたびに新しい発見がある豊富なラインナップが魅力的です。バースデープレートの提供もあり、お祝いシーンでの利用にもぴったりです。

珈琲と一緒に、こだわりのパンやフードを楽しむことで、より深い味わいの体験ができるのがOGAWA COFFEE LABORATORYの魅力のひとつ。

カトラリーやインテリア

店内の魅力のひとつとして、美しいカトラリーやインテリアもあげられます。
珈琲を楽しむための器や小物の一つひとつに、細かなこだわりが感じられました。

「ogawa coffee laboratory 桜新町」では、シンプルながら温かみのあるデザインのカップやお皿が揃っており、器の質感や色合いが珈琲と綺麗に調和していました。
また、スプーンやフォークなどのカトラリーも、手に取った瞬間の心地よさが伝わり、食事やデザートをより一層美味しく感じさせてくれます。これらのカトラリーはLueの商品を使用しているそうです。

→こちらのマグカップは notNeutral の製品です。
”notNeutral”は、アメリカ・ロサンゼルスを拠点とする建築デザイン会社 RIOS によって2001年に設立され、「機能性」「モノとの関連性」「個性」「カルチャー」の4つの視点から製品開発をしています。
このマグカップも、トップバリスタとの共同設計を経て、流体力学に基づくカーブや人間工学に基づいた持ちやすさ、さらにコーヒーの香りを最適に感じられるデザインが追求された一品です。

購入可能なアイテムの紹介

店内で使用されているアイテムは、購入も可能です。
珈琲カップやお皿、カトラリーはもちろん、店内インテリアに使われている雑貨や小物も取り揃えています。
これらを自宅に取り入れることで、「ogawa coffee laboratory」の雰囲気を日常でも楽しむことができます。
特に、店主が厳選したオリジナルカップや、職人が手がけた陶器などはどれも丁寧に作られた一品です。

まとめ

空間全体の印象

実際に「ogawa coffee laboratory 桜新町」を訪れて感じたのは、何よりも「街とのつながり」と「素材の使い方」の美しさでした。
大きな一面ガラス張りの店舗入り口が、交差点側に向いており、街に対して開き、空間に開放感を与え、木材の温かみと相まって、シンプルながらも居心地の良い空間が広がっていました。

細部に見られる建築的なこだわり

特に印象的だったのは、カウンター周りのデザインです。無駄を省いたシンプルな構成ながら、木材と金属の組み合わせがとにかく印象的でした。コーヒー提供という行為を単なる作業ではなく、空間の一部として感じさせる重要な要素となっています。
また、お手洗いの取手のように、見やすい部分だけでなく、表からは見えない部分にまで細心のこだわりが行き届いている点も印象的でした。

建築とデザインの調和

空間全体に、建築的要素が組み込まれているのが印象的です。
コンセプト通り、空間そのものがコーヒーを楽しむために設計されたかのような、シンプルで洗練された雰囲気が漂い、訪れた人々をリラックスさせるとともに都会の喧騒から解放してくれる地元民の「サードプレイス」としての役割を担っている場所だと感じました。
*サードプレイス ー 自宅や職場とは異なる、居心地の良い「第3の場所」

終わりに

「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」のデザインを通じ、建築が人々の感覚にどれほど大きな影響を与えるのかを改めて実感しました。
シンプルでありながら、目を凝らすと見えてくる、深いこだわりが詰まったこの空間は、単なる珈琲を楽しむ場所に留まらず、訪れる人々に心地よい時間と新たな発見を提供してくれる特別な場となっています。
建築の美しさと空間の温かさが調和した特別なカフェ、デザインや空間に興味のある方にはぜひ訪れてみませんか。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます🌱

OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町
〒154-0014 東京都世田谷区新町3丁目23−8 エスカリエ桜新町 1階

ギャラリー

  • 茶室のにじり口をイメージした珈琲の貯蔵庫

読んでもらいたい公式サイト…

小川珈琲株式会社 (本社:京都市右京区、代表取締役社長:小川 秀明)は、伝統と進取の気性が息づくこの街で、昭和27年(1952)に創業いたしました。以来、時代に求められる本物の価値を提供するコーヒーロースターとして、また生産者と消費者をつなぐコーヒーサプライチェーンのハブとして、珈琲文化の創造と持続可能な社会に貢献することを目指してまいりました。
 
私たち「小川珈琲」の願いは、珈琲を嗜好品でなく、日常にとってかけがえのないものにすること。“京都の珈琲職人”として、そのヴィジョンを具現化するために、「OGAWA COFFEE LABORATORY」を、東京・世田谷区桜新町にオープンする運びとなりました。

…<省略>…

「OGAWA COFFEE LABORATORY」は、そんな街の人々の暮らしと日常に寄り添いながら、京都に根付くおもてなしの心を大切に、珈琲の味わいの先にある体験価値とコミュニティを創造していく「小川珈琲」のオープンイノベーションの場。 伝統と革新が織りなす“京都の珈琲職人”の挑戦にどうぞご期待ください。

小川珈琲公式サイトより

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